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【日本型雇用のリアル③】日本企業の人的投資とOJTの課題。上司の手腕によって左右され、教育プログラムの仕組化ができていない?

こんにちは!ザメディアジョンHRコラム担当の西島です。 今回が「日本型雇用のリアル」シリーズの最終回です。今回は教育制度の観点から見ていきたいと思います。引用はすべてリクルートワークスの「Global Career Survey 2024」からです。前々回は各国の就業実態、前回は新卒一括採用と企業主導の人事異動について取り上げました。今回はその総仕上げです。ぜひ最後までお読みください。

見出しに「金を使わない日本企業」とありますが、これは今回の「Global Career Survey 2024」で言及されているわけではありません。言及されているのはOJTについてです。
教育体系の対比を明確にするため、人的資本投資の直接費用(off-JT)についても触れます。厚生労働省の調査によると、日本企業の教育投資額(off-JTや自己啓発支援)は、過去20年ほど横ばいで一人当たり約1.2万円、自己啓発支援は約0.3万円で推移しています。1991年をピークに人的資本投資の直接費用全体が減少し続け、GDP比で見た人材育成投資額はG7中で最下位です。

日本企業の研修制度は、新卒の内定者研修や新入社員研修でoff-JTが終了し、その後は現場任せのOJTが多いです。特に「Global Career Survey 2024」でも触れられていますが、日本のOJTは「見て盗め」的な伝統的なやり方が多く、体系化されていない場合が多いです。off-JTは新人研修以降、40代の新任管理職向けの研修が一部の企業に存在する程度です。

「Global Career Survey 2024」のOJTにおける国際比較を見てみると、2023年に業務を通した指導(OJT)を受けたかどうかを調査しています(図表18)。

調査では、「一定の教育プログラムをもとに指導を受けた」または「プログラムなしで必要に応じて指導を受けた」と尋ねています。OJTを受けた割合を見ると、日本は39.8%で他国に比べて低く、中国が76.0%、アメリカが73.8%、イギリスが73.3%、スウェーデンが72.6%、ドイツが70.5%と、日本を除く他国は7割以上です。日本企業はoff-JTにお金を使わず、現場任せというイメージがありましたが、OJTでも最低レベルです。

まず、OJTの内容についてです。日本は「プログラムなしで指導を受けた」の割合が多く(27.8%)、上司や先輩が自分の経験に基づいて指導している様子が見て取れます。「見て盗め」の文化が続いている証拠です。他国では「一定の教育プログラムをもとに指導を受けた」の割合が高く、指導が体系化されています。これは、ジョブ型雇用やタスクを細分化した職務型の人事評価が多いからでしょう。日本のOJTは上司や先輩の手腕によって左右されますが、他国のOJTは質的に安定しています。

次に、OJTの対象年齢についてです。OJTを受けた割合を年代別に示した図表19を見ると、日本は若い人ほど高い傾向があります。30代前半が46.4%、同後半が42.9%、40代前半が40.1%、同後半が30.7%です。20代はさらに高い数値が出るでしょう。
つまり経験の浅い人材を育成するためのOJTです。他国はアメリカを除き、年齢による違いはありません。フランス以外の国は6割以上の割合でOJTを受けています。年齢にかかわらずOJTが行われているのです。

いかがでしたでしょうか?今回で国際比較の最終回となります。
日本はよく、「製造業以外の労働生産性が低い」と言われていますが、「イノベーション」や「時間単位の効率性」という観点からだけではなく、こういった「全世代型・一気通貫性の教育体系」が未整備、もしくは制度設計が甘い点も、日本企業で働く労働者一人一人の生産性の押し上げ不足につながってくるのかもしれませんね。

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