【日本型雇用のリアル①】日本の雇用の特徴は本当に日本特有のものなのか?主要国の就業実態と比較して日本の改善点を考える
こんにちは!ザメディアジョンHRコラム担当の西島です。
今回は、リクルートワークスが調査して発表した資料「日本型雇用のリアル」についてお話しします。リクルートワークスが「Global Career Survey 2024」を発表しました。この資料は、日本の雇用の特徴が本当に日本特有のものなのか、他の主要な国と比較してまとめたものです。特に興味深い点をピックアップしてお伝えしますので、最後まで読んでいただけると嬉しいです。
日本型雇用の7つの特徴について
リクルートワークスがこのレポートを作成した理由は、「日本の雇用慣行が本当に日本独自のものなのか」という疑問を解明するためです。客観的なデータを使って分析しています。
主な特徴は7つあります。
1.新卒一括採用
2.企業主導の人事異動
3.年功型賃金
4.OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)による育成
5.幹部の内部登用
6.終身雇用
7.企業別労働組合
一見すると日本特有の制度のようですが、他国のデータと比較すると、意外と勘違いも多いことがわかります。今後のコラムでは、この7つの特徴について毎回1つか2つ取り上げていきます。今回は、その前提として各国の就業実態を比較した調査を紹介します。
プロローグ:各国の就業実態をみる
まず、各国の就業実態について見ていきましょう。引用元はすべてリクルートワークスの「Global Career Survey 2024」です。図表2と図表3をご覧ください。
図表2は各国のフルタイム雇用者の割合、図表3は雇用期間の有無の割合を比較したものです。
最初に、フルタイム雇用者(週35時間以上働く人)の割合を見ると、多くの国で9割を超えています。日本は89.1%で低い方から2番目ですが、8割を超えています。また、男女別に見ると、日本では男女の差が大きく、女性は80.2%、男性は97.5%です。他国でもドイツ(14.9ポイント差)、米国(8.3 ポイント差)も男女差は見られますが、日本が最も大きいです。
次に、無期雇用者の割合を見ると、中国が約75%で低いものの、多くの国で9割を超えています。日本は87.2%で低い方から3番目ですが、それでも高い割合です。ただ個人的に問題あると思うのは、日本の男女差がフルタイム雇用と同様に大きいこと。女性 は80.3%で男性(93.9%)と比べて13.6ポイント低いです。他国では無期雇用における男女差は小さいですが、日本では顕著です。このように、パートタイムと有期雇用の関連(特に女性のパートタイム労働者)が強いのは日本の特徴です。
男女差については、厚生労働省の賃金構造基本統計調査でも確認できます。男性を100とした場合の女性の賃金は約75%で、格差は縮小していますが、まだ大きな差があります。
なぜ、この話を持ち出したかというと、本コラムをまとめている現在、自民党総裁選が進行中なのですが、規制改革の背景について触れたかったからです。小泉進次郎議員の父である小泉純一郎元総理、竹中平蔵経済財政担当大臣の大号令の下、規制改革が叫ばれ、2000年代初期、派遣社員をはじめ、非正規雇用が拡大したことは、なんとなく日本人の記憶に刻まれていると思います。データを見ると、日本のパートタイム労働者や有期雇用契約の非正規社員が特別多いわけではなく、マスコミの影響による思い込みもあることがわかります。
次に、勤務先の種類を見ていきましょう。図表4をご覧ください。どこの国も民間企業(内資)の割合が高いですが、日本は90.3%と非常に高いです。中国は51.6%で低く、外資の割合が高いのが特徴です。
これは中国の経済発展の歴史と関連しており、外資との合弁企業が進められてきました。G7各国も中国市場に進出してきましたが、多くのノウハウが中国資本の巨大企業に引き継がれ、現在の状況になっています。
他国の特徴として、国営・公営企業の割合が高いのはアメリカ(24.0%)、イギリス(14.0%)、スウェーデン(13.6%)です。アメリカやイギリスの国営企業の割合が高いのは意外ですが、フランスよりも低いのは驚きました。
最後に、スウェーデンの政府100%出資の国営企業「サムハル」についても触れておきます。2万人以上を雇用しており、そのうち約85%が障碍者です。待遇は、健常者と同様、いわゆる、同一労働同一賃金を実現しています。興味のある方はチェックしてみてください。
いかがでしょうか?次回からはいよいよ本題、日本型雇用慣行の特徴について詳しく見ていきます。引き続きよろしくお願いします!
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