【気になるNEWS】業務改善コンサルが見た「優秀な社員が逃げ出す会社」の共通点とは?〜非効率な会議と職場の基本を見直す〜
新卒採用を担当される皆様、そして経営者の皆様、日々の採用活動、そして社員の定着・育成に尽力されていると思います。
「優秀な社員ほど、なぜか早く辞めてしまう…」そうした悩みの原因は、実は社内に潜む「非効率な習慣」と「基本的な組織文化の欠如」にあるかもしれません。
今回ご紹介するのは、PRESIDENT Online(2025年10月7日)に掲載されていた、『サボ力』(ザメディアジョン)を書いた業務改善コンサルタントの谷川輝さんが指摘する、「潰れそうな会社」に共通する“3つの光景”と非効率な習慣に関する記事です。これは、人材の定着と育成の土台に関わる重要な視点を提供してくれます。
■優秀な社員の活力を奪う「非効率な会議」
谷川さんがまず警鐘を鳴らすのが、「会議」の非効率性です。特に以下の2点が、単なる時間の浪費を超えて、社員のモチベーション管理において致命的な問題を引き起こしています。
①「月曜朝イチ会議」は生産的な時間の浪費
多くの企業で見られる「月曜朝イチ30分会議」のような、朝一番のルーチン的な進捗報告会議は、社員のモチベーションを奪います。
本来、朝の時間は集中力が高く、クリエイティブな活動に適した貴重な時間帯です。その時間に、文字に起こした内容を口頭で報告するというルーチンワークを差し込むのは、一日のスタートとして非常に無駄なリソースの使い方です。
【改善のヒント】進捗確認は、体も頭も慣れてきた昼過ぎ(13時頃)や、夕方の業務締めのタイミングに変更することで、前向きな雑談や生産的な会話が生まれ、実際に社員のモチベーション向上が見られた事例があるといいます。優秀な人材の集中力と主体性を尊重するためにも、会議のタイミングを見直す必要があります。
②「アジェンダなし会議」という時間泥棒
議題が明確でないまま「とりあえず会議をしましょう」と始まる習慣も大きな問題です。30分の打ち合わせでも、3人集まれば会社として90分の工数を消費しているという、「工数」に対する意識の欠如が背景にあります。
こうした会議は、マネジメント層が部下の顔を見て「仕事をしている感」を得るための安心材料として機能しがちで、緊張感のない一方的な会議になりやすく、真の議論が進みません。
【改善のヒント】会議を開く前に、「何を決めるのか」「ゴールは何か」を明確にするアジェンダ設定が不可欠です。目的の定まらない会議は、優秀な社員の「無駄な時間」となり、彼らが会社を見限る要因となります。

■「ダメな会社」で目にする“3つの光景”〜組織文化のバロメーター〜
谷川さんはさらに、多くの企業を見てきた経験から、「この会社は厳しいかもしれない」と感じる、オフィス内で目にする3つの光景を指摘しています。これらは、新入社員が組織の将来性を判断する文化のバロメーターとなります。
①挨拶がないこと
特にチームリーダーや管理職が挨拶をしない雰囲気を作ると、それが全体に伝播し、職場は「お通夜のような雰囲気」になります。これは、基本的なコミュニケーションの欠如であり、新入社員が発言しにくい環境を作り出します。
②上層部がコソコソ話を見えるところでしていること
機密情報などを小声でササッと話す行為は、周囲に不信感や不安を与えます。内容は仕方のない場合でも、会議室に移動するか、チャットを使うなど、周囲への配慮が求められます。
③デスクが汚いこと(整理整頓の欠如)
メモやボールペン、お土産などが散らばっているデスクは、タスクの整理ができていない状態の表れであり、非効率になりやすい層の特徴といいます。逆に、業績が良い会社は全体を通して整理整頓され、物が少ない傾向があります。
【採用・育成への示唆】これらの基本的なことは、会社が社員一人ひとりの時間や基本を大切にしているかを示す重要なサインです。新卒採用で優秀な人材を惹きつけるには、採用パンフレットの言葉だけでなく、この「基本的な文化」が土台として整備されている必要があります。

■泥臭い「足場の確認」こそが人材定着の道
組織の空気を変えるには、まず管理職が率先して挨拶や整理整頓を行う率先垂範の姿勢が不可欠です。
また、新入社員が会議で発言しない、という状況は「モチベーションの問題」か「業務理解不足」のセンサーとして捉えるべきです。
モチベーションの場合:スキルより少し大きなミッションとサポートを与え、達成感を味わってもらう。
業務理解不足の場合:現在の仕事について詳しく話し合う時間を設ける。
といった、個別かつ本質的な対応が求められます。
谷川さんは、パワハラを恐れて安易な「ランチ会」などで距離を縮めようとするマネジメントにも警鐘を鳴らします。「ランチが楽しいから会社が好き」にはなりません。重要なのは、まず基本的な業務理解とモチベーション向上の土台をしっかりと築くことです。
■まとめ:優秀な人材を惹きつけ、定着させるために
業務改善の視点から見えてきた「優秀な社員が逃げ出す会社」の特徴は、「無駄な非効率」と「基本的な文化の欠如」に集約されます。
新卒採用で、せっかく素晴らしい可能性を秘めた人材を採用しても、非効率な習慣や士気の低い職場の空気は、彼らの活力を瞬く間に奪います。
他社のキラキラした成功事例に目を向ける前に、まずは自社の「足場」を徹底的に確認し、月曜朝イチ会議をやめる、アジェンダのない会議をなくす、挨拶と整理整頓を徹底するといった、基本的なことから改善を始めてみてはいかがでしょうか。
社員が「ここは自分の時間と努力が報われる職場だ」と感じられる環境こそが、結果として優秀な人材を惹きつけ、定着させる最も確実な道です。
