“外交最前線の臨場感が面白い!„ 各地から絶賛の声が届く書籍「モルドバ大使からの報告」の著者・片山芳宏さんにインタビュー

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広島

30年以上の海外駐在を含めて43年に渡る外交活動を続けてきた片山芳宏さんが執筆した「モルドバ大使からの報告―国際交流分野を志す若者の皆さんへ—」。外交官という仕事のやりがいやリアルを鮮やかに綴った本書は、昨年11月の発刊以来、各地で大きな反響を呼んでいます。「私も学びとチャレンジを続けます」「勇気をもらいました!」「外交最前線の臨場感が面白い。学び続けたいと思わせてくれた本」など、とりわけ、副題にあるような「国際交流を志す若者」にとって、背中を押してくれるような一冊になったことは間違いないようです。そんな話題の一冊にはどんな背景や思いがあったのでしょうか。著者の片山さんに出版の経緯から今後の目標まで様々なお話を聞かせていただきました。

—出版の理由や経緯について

片山芳宏さん(以下片山):モルドバ共和国に赴任するに先立って広島に帰省した時に再会した、中国新聞社に勤める同級生から、「現地に着任したら、時々で良いので外交活動のことやモルドバ社会の様子などについて報告してくれないか」との依頼があり、同社の「中国新聞SELECT(週6日発行)」で「モルドバ大使からの報告」と題するコラムをスタートさせました。おかげ様でこれが好評で、2022年まで、合計20か月間にわたって掲載を続けることができました。この年の12月に定年退職を迎えたのですが、モルドバのことや外交のことだけではなく、他地域のことや、様々な分野に広く従事してきたことをもっと伝えていきたいという気持ちが湧いてきて、さらに私が知る限り実際の外交現場の苦労話や地域の情報などについて身を持って体験して紹介している外交の本はなく、これを伝えられる数少ない一人という自負がありましたので、出版しようという思いを抱きました。

—本書のこだわりについて

片山:外交分野に馴染みのない読者の方々にも分かりやすい内容にしたこと、外交の現場の様子が良く理解できるように、現地の様子や自分の活動の雰囲気が伝わるような写真を多用したことでしょうか。外交官のお仕事というと、どうしても「近寄りにくい」「難しい」というイメージをお持ちの方も多いと思うので、「わかりやすさ」をかなり意識して、専門的にならないように執筆しましたし、写真も景色だけでなく、私の活動風景、文化・習慣が伝わるものを掲載し、中身はもちろん見た目も華やかで読みやすい構成になったと感じます。

※本誌より

—他には

片山:何よりこだわったのは、若者にどう伝わるか、です。主な読者に若者を想定しており、そこへのメッセージを送ることをひとつの目的にしていますが、そもそも私の仕事を想像することが難しいと思います。どう紹介したらわかってもらえるのかを考えたときに、具体的には、背景や状況を説明することからスタートさせました。例えば「選挙監視」に関するページがあるのですが、馴染みのない日本の人からすると、「そもそも選挙監視って何?」という疑問を持つところから始まってしまいます。この国にはこんな制度がある、という説明はもちろん、背景や歴史にはこういったことがあった、だから選挙監視がある—当たり前な配慮かもしれませんが、そこをないがしろにせず丁寧に執筆していきました。

—読者に知ってもらいたいこと、伝えたいこと

片山:一般的に「外交官」という言葉からは”極めて有能な人々”といった印象を持つ方々も多いと思います。もちろんそれも誤りではないと思うのですが、知ってもらいたいのは外交官も生身の人間であり、悩みもするし、うまくいかないこともあるということ。求められた案件やプロジェクトについては、どういう状況でも政府の代表者として現場に出向き、対応しないといけない。事前の勉強は大変だし、うまくいくこといかないこともあります。ただ、それと同時に、外交活動は一生をかけて従事するに値する分野ですし、ぜひ目指してほしいとも思います。

※本誌より

—若者にとっての職業の選択肢の一つになる、と

片山:はい。国際交流分野に関心を持つ若者の皆さんに目標としていただく職業のひとつとしても捉えて頂きたいですね。私自身も外交官というのは別世界だと思っていましたし、わずかな人にしかなれないと捉えていました。しかし、私は広島のごく普通の学生でしたし、特別選ばれた人間でもありませんが、43年も外交官を続け、結果幸せな人生を歩んでいます。
少し話が逸れてしまいますが、若い方は手に届かないと自分の夢をあきらめるのではなく、自分なりに調べて、とにかく納得がいくまで考えてみることが大事だと思います。「納得いくまで」です。自分が納得しているのからがんばれるのです。若いうちから、「自分の人生はこの程度」とは決めつけずに目標を持ってもらいたいと思いますね。

—出版後の反響は

片山:知り合いや友人、所属団体関連には自ら献本なども行い、様々なコメントをいただきました。それ以外の具体的な反響で言うと、amazonのレビューでしょうか。その評価に驚きながらも大変嬉しく思っています。中でも、「外務省と聞くと、高度な語学力や高い人間性、何が起きても対応しぬく胆力等、ハードワークであり、一部の選び抜かれた人々の仕事というイメージです。そんなハードな面もありながら、赴任先の国の人々、文化を愛する気持ちも伝わってきて、ワクワクしました」というコメントを読んで、光栄に思いますし、私が意図したことが伝わって本当に良かったです。

※amazonのレビュー

—出版後の自身の変化は

片山:本を纏めて出版するための作業に従事することで、これまでの外交活動やさまざまな人々との出会いなどを中心に、自分自身の半生を振り返る好機になったように思いますし、同時に、出版により、今後のことをさまざまな方向から考えていく土台のようなものが出来たように感じています。それは自分の価値や使命を再認識できた、とも言えます。私は海外駐在が長く、モルドバ大使を経て定年退職しました。海外駐在の方はたくさんいらっしゃるのですが、30数年の海外駐在は稀です。だからこそ担当分野の幅も広く、各地域の情報に精通しています。そんな私が身に付けたこと、体験や経験をなんらかの方法で伝えて、お役立ちしていくことが今の私の使命だと認識できましたし、そのために実際に帰国後はNGOの活動に従事しています。

—今の目標は

片山:2023年5月から、広島県神石高原町に本部を置くピースウィンズというNGOで仕事をしており、駐在経験のある東欧やアフリカでのプロジェクトなどにも接しています。積み上げてきた自分の経験をNGOでの取り組みにどのように活用できるか、という問題意識も持ちながら、自分の役割なども考えているところです。
さらに、30数年の外交官というバックグラウンドをもとに何かお役に立ちたいと思っていますが、ひとつは情報を伝えることだと考えています。現場で感じたこと得たものをなるべく簡単な言葉で伝えていく—。その一つが今回の出版であり、講演活動もやぶさかではないと思っています。

—出版を検討している方にメッセージを

片山:出版までの作業は自分が事前に予想していたよりも大変でしたが、いまは、「自分の本」ができたことの喜びをしみじみと感じています。お世辞ではなく、ザメディアジョン社の方々にサポートしてもらえたことは幸運であったと思います。なにせ出版の世界は素人にはわからない。出版したいという気持ちがある方はいると思いますが、まずはコンタクトをとって、こんな気持ちがあると相談に乗ってもらうといいのではないでしょうか。

—出版してよかった

片山:はい、脳みそを絞るような作業でしたが(笑)、そのプロセスで自分の人生、仕事、生活を振り返ることができて、大変いい機会になりました。皆様のご尽力でかっこよくまとめていただいて有難かったです。ひとつのステップになると思います。そういう点も含めて、出版して本当によかった。ただ、これで終わりではなく、メッセージを伝え続けていきたいですね。

(著者情報)

1957年11月、広島市佐伯区生まれ。広島県立廿日市高校を経て立命館大学経済学部卒。80年4月外務省入省。2年間のルーマニア語研修後はルーマニア、カナダ・トロント、米・ニューヨーク、ウクライナ、ケニアの大使館、総領事館でさまざまな業務に従事。外務本省では安全保障や地球環境問題、海賊対策を含めた海洋問題なども担当し、交渉責任者として各種国際会議に出席した。2020年1月に駐モルドバ共和国特命全権大使を拝命し、22年12月帰国。外務省退官後の23年5月、特定非営利活動法人ピースウィンズジャパンの上席顧問に就任。英語、ルーマニア語、ロシア語を話す。被爆2世。

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